てったい北関東

覚書、感想、備忘録

検察側の罪人の感想

なんというか、映画の予告編を見て面白そうだった。
www.youtube.com

HEROというドラマはとても面白かったけど、違和感があったのは、
弁護士側は悪役(?)としか描かれないことだった。
弁護士もの、検察もの、たぶん立場は違っても作品としては構造は同じで、
一方から「ある見方をされている」けど「実際はこうだ」を暴く、というのが典型的。
でもたぶん、弁護士側の正義もあれば、検察側の正義もある。
だいたい真実ってそう簡単に暴けるものでしょうか…?
証拠はあるけど、目撃者がこう言っているけど、容疑者はこう言っているけど…?
HEROも、僕は実は映画は見ていないのだけど、
いつか絶対、弁護士としての正義感を持った敵役が出てくるものだと思っていた。
でてきて、検察としての木村の正義をぐらつかせるような展開があるものだと思っていた。
そして、この「検察側の罪人」は、予告編を見た限り、そういうところに切り込んだ映画なのだと思った。

.......が、本編を観て、愕然とした。違う。そんな映画ではない。
予告編の中でもでてくる見どころの一つ、
予告編では、木村拓哉二宮和也の検察として「正義」をぶつける場面だが、
映画を見ると、まるで別の場面として描かれている。
あの発言の動機が全く異なっているのだ。
ううん、なんてミスリード

すなわち、これは「正義」のぶつかり合いなどという格好のいいお話ではない。
この映画は、タイトルの通り、「罪人」を描いているのだ。
自らの「正義」を言い訳にして罪を犯す、そんな人間を描いているのだ。

この映画でちょいちょい登場する、極右の人たち、インパールの記憶。
正直言って、この映画の物語とほとんどからんでこない。
マスコミさえ恐れた重大な情報、というのも、物語では明かされない。
本当に必要?っていう。
ただ、あの戦争も、始める際には大きな「正義」があって、
今なおその正義は正しかった、という人もいるのは確かだ。
けど、その正義によって、大きな罪を犯した。
「ダメなものはダメだよ」って。
それってたぶん、この映画の木村拓哉の問題と同じなのではないか。

この映画で木村拓哉はある大きな罪を犯すのだけど、
それは「正義」という名の言い訳でしかなくて、
そういう木村の葛藤を描いたり、木村側に立った描写がほとんどないのって、
やっぱり、ダメなものはダメだよねっていう、ことに尽きるんではないのかな。

最後に、吉高由里子がかわいかった。これはまごうことなき正義と思った。