てったい北関東

覚書、感想、備忘録

「千と千尋の神隠し」の苦団子

もう結構前だけどこんな動画があがっていて
www.nicovideo.jp

その中で、
なぜ千尋は豚の中に両親がいないとわかったのか
についてを
「情に勝る解決」(リクツではない)
と結論づけていたのだけれど、本当にそうなんだろうか。

千尋は豚の中に両親がいないことを見抜く前にも、
別の形をしているけど正体を見抜く、という経験をしています。
それがハクの龍の姿。
傷ついた龍の姿を見て、「ハク、こっちよ!」と咄嗟に叫び、
自分でもそれをハクと見抜いたことをビックリしてしまうシーン。

その前にも千尋はハク龍を見ているのですが(おにぎりのシーン)
その時はなにも気づくそぶりはありませんでした。

ではこのシーンの間に何があったか、千尋にどんな変化があったのか
を考えてみると、なんだか意味深な
「苦団子」というアイテムがありました。
えらい川の神様にもらったお団子なのですが、
もらった晩に千尋はそれを少し食している。
じゃあこの団子ってどんな効用があるのかって、
それはなんともよくわからないのですが、
でもこれが原因とすれば
「理屈じゃない」よりは多少は理屈っぽくならないでしょうか。
団子を食べたからわかりました、と。

こう考えてみると、すでにこの時点で千尋
この世界を逃げ出す条件を整えていたことになります。
この時点ですでに、この世界から抜け出すためには
「豚の中から両親を探せ」という問題を解決しなくてはいけなかった。
(解決して団子を食べさせなければいけなかった)
実際、夢の中で「見つけられるんだろうか?」と不安になる描写があります。
でも心配ご無用、ハク龍の正体を見抜けるのだから、
両親だって見つけられるのです。

でも千尋は団子を使って両親を助けて元の世界に戻るよりも、
ハクを助け、
カオナシを助けることを選択した。
というようにも考えられないでしょうか。
だから、カオナシを助けたシーンこそ、映画のクライマックス。
自分の退路を断って銭婆に会いに行くことこそ大事なのだという。

この動画の中でいう、千尋と湯婆婆の対比、というのはなるほどなと思うのですが、
この結論にはなんだか拍子抜けするような感じです。

というところで「苦団子」に注目して見ましたが、
はたしてこれが一体何者なのか、いまいち判然としません。
ただハクにしろ、カオナシにしろ、
ただ「中のものを吐かせる」アイテムというだけでは
なんというか寂しい感じがします。
じゃあこれで「リクツ」が通っているのかというと、どうにも弱いですけども。